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自分の人生を善く生きるための知識『ふだんづかいの倫理学』

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この『ふだんづかいの倫理学』は、日常・アニメ・小説などの中で、自分で倫理的判断を説明あるいは行えるようになることを目標にした一冊である。

私たちは生きていかなければならない。しかも一人で好き勝手に生きるのではなく、社会の中で生き、友人・家族・会社といった身近な人々と共にバランスをとりながら生きていく必要がある。

そのために本書では、自分の認識できる身の回りを出発点とし、事柄を積み上げ、整理し人生のさまざまな面を取り扱うことで、広い視野でバランスよく人生や物語を解釈できるようになること、自分で物事の理解を取り扱えるようになり、自身で自分の人生を生き方をデザインできるようになることを目指す。

わたしたちはインターネットで大きな力を持ってしまった

わたしが本書を読んだ理由は「インターネットのネチケット(モラル=倫理)を復活させ、誰しもが必ず一度通るものとするべきでは?」と思ったからだ。であれば、ずっと気になっていた本書を読むことから始めようと思った。

本書の中にも、我々にとって倫理学がますます必要なものとなっていると述べられているところがある。大昔は一人の人間が交流できる範囲は狭く、その分だけ影響が及ぶ範囲も狭かった。そのため身近な人々との生活に必要な道徳があれば生活していけた。

とはいえ、その頃にも倫理学は存在した。なぜなら、大きな力を持ち人々に影響を及ぼすことが可能な権力者は存在していたからだ。そういった人々は「義務」として道徳・倫理があり、力が暴走しないよう必要な知識が倫理学であったという。

現在、一般人も飛行機に乗ってあちこち移動ができ、インターネットの普及によって普通に生きていれば関わることのない遠くにいる人とも交流が可能になった。我々が他者に影響を及ぼす範囲は、この数十年でとてつもなく広くなったのである。それは、我々が大昔の権力者のように、力を暴走させないための知識として倫理学が必要になったということだ。 炎上、中傷、それは影響力という力の暴走は日々起こっているし、そのたび誰かがその暴力によって傷つけられる事態が多発している。

毎日のように炎上だのSNSでの中傷だのを見かける日々。いまこそ一人ひとりが、ふだんづかいできる倫理学を身につけ、倫理的判断ができるようになる必要がある。

おわりに

誰しも「善く生きたい」はず。「善く生きる」とは? 現状、特に自分でなにかを考えずとも勉強せずとも生きていくことができる恵まれた環境にいると思う。しかし、「善く生きる」ためには意外と自分なりに、多少なりとも真剣に物事を考えなきゃいけないし、自らで判断しなければならないものだ。人に決めてもらっていたら、それは自分が主人公であるとは言い難い。「善い」を自ら決めることで、自分が主人公である人生を送ることができる。しかし、社会や身近な人々との関わり合いをどうバランスをとるのか、というのも人間社会に生きる我々にとって大切な視点である。

困ったときは本書に立ち戻ればいい。本書は社会で生きるための視点を引き上げてくれる。自分の人生を生きる友として「ふだんづかいの倫理学」はかたわらにあって欲しい一冊だ。

書籍リンク

ふだんづかいの倫理学 | 晶文社